― 回向 ―
お兄ちゃんは教皇という偉い人の命令でよくどこかへ行きます。 そういう時は決まって出発前に必ず私のところに来てくれます。 そして何も言わずに静かに涙を流すのです。 泣かないで、と私が言うとお兄ちゃんは首を振って行ってしまいます。 お兄ちゃんはあんさつ、というお仕事をしに行くんです。 そして卑屈に助けを請う人達を、私には見せたことのない冷酷な目で見下ろすのです。 今日もまたお兄ちゃんの前で人が血を流し倒れていきます。 すべてが終わった後でお兄ちゃんはまた涙を流します。 昨日も、今日も、明日も、そんなことがいつまでも続くのです。 私が死んだあの日からずっと……。 |
――― 完 ―――
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